キャリアコンサルタント養成講習、GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム。

インタビュー

修了生インタビュー

大場おおば竜佳たつよし

パーソルホールディングス株式会社 執行役員 CHRO 兼 グループ人事本部 本部長

GCDFの学びは、自分の刷新と再発見だった

人材サービスグループの人事トップが語る、キャリアカウンセリングの学びが経営実務に効く理由

大場竜佳さんのインタビュー写真

人材派遣、人材紹介をはじめ、「はたらく」にまつわる多様な事業を展開するパーソルグループ。そのグループ全体の人事を率いるのが、パーソルホールディングス株式会社 執行役員 CHRO 兼 グループ人事本部 本部長の大場竜佳さんです。新卒で配属された生命保険会社の人事部門を出発点に、一貫して人事の道を歩み、2007年に旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)へ。その半年後、社内の選抜制度でGCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム(以下、GCDF養成講座)と出会いました。本記事では、大場さんの歩みと実践を通して、GCDFの学びが社会にどのように実装されてきたのか、その軌跡をお届けします。

偶然の配属から、「ライフワークとしての人事」へ

最初のキャリアは、生命保険会社の人事だったそうですね。

そうなんです。もともと希望していたわけではないのですが、当時の新卒同期は10名ほどで、そのうち一人だけが人事部に配属になりました。本当に偶然だったと思います。4年弱の在籍でしたが、新卒採用、給与計算、労務・労政、人材開発と、人事のジュニアスタッフとして非常に幅広い仕事を任せてもらえた期間でした。

その頃、ご実家のお仕事も手伝われていたと伺いました。

父が築地で海老の卸売問屋を営んでいまして、小学生の頃から、家にかかってくる注文の電話を受けて会社の留守番電話に吹き込む、なんていう「仕事」をしていました。繁忙期には市場にある氷点下の冷凍庫に入って、海老をトラックに積み込む荷役のような手伝いもしていましたね。その父が体調を崩し、最終的にその卸売問屋をクローズすることになったのですが、私は会社で人事の仕事をしながら、週末に父の会社をたたむ作業をしていました。週末起業ならぬ、「週末廃業」です。

その経験が、最初の転機につながったのでしょうか。

そうですね。会社をクローズする過程で、自分で決めて、自分でものを動かしていくことは、大変でつらいけれど楽しい、という感覚があったんです。もっと急成長したい、もっといろいろなことに自分でチャレンジして人事の仕事を積み上げていきたいという成長志向がすごく強くなりました。前職はジェネラリスト育成型のキャリアパスで、当時は3年ほどで他部署に異動になる。人事の仕事を面白いと思い始めていたので、人事をライフワークとしてやっていくなら、このタイミングで、より専門性を高めて成長できるフィールドに移るべきだとキャリア選択をしました。

人事の仕事の、どこに面白さを感じていたのですか。

私は飽きっぽいのだと思うのですが、人事のフィールドは本当にいろいろな領域が有機的につながっていて、一つひとつが奥深く、必要なスキルも知識も違う。そこに奥深い世界があると思いました。それから仕事をする中で、「人それぞれ、なぜ価値観や能力に違いがあるのか」「一人ひとりが欲していることや、恐れていることは、何に由来しているのか」ということに関心を抱くようになりました。その頃から、これは一生の仕事にしてもいいのではないか、という確信をだんだん持つようになりました。

入社半年、社内の選抜制度でGCDFと出会う

転職先に旧インテリジェンスを選んだ決め手は何でしたか。

経営にスピード感があるか、実際に事業成長しているか、自身の成長チャンスがたくさんあるか。そして人事として幅広い経験を積みたかったこともあり、企業の規模感も重視しました。当時のインテリジェンスは3,000人ほどで、アルバイト求人に強みのあった旧学生援護会を買収して4,000人から5,000人の会社になっていくフェーズにあったんです。私はそんなタイミングだった2007年2月に入社しました。

GCDFとの出会いは、その直後だったそうですね。

入社の半年後くらいでしょうか。社内に選抜型でGCDF養成講座の受講候補を募る仕組みがあり、そこで声をかけてもらいました。人事から毎期何人かを送り込んでいたんです。キャリアに特化した事業を営む人材サービス会社として、人事部門もキャリアコンサルティングの知識と学びをしっかり獲得していこうという動きがありました。

学び始める前は、どんな期待や不安がありましたか。

不安のほうが大きかったですね。転職して労働時間も格段に長くなった中で、週末にオフィスの会議室に集まって学びを両立できるのか。受講するだけで認定される資格ではなく、テストも実技もありますから。ただでさえ新しい環境へのキャッチアップに精一杯なところに、さらに乗せて大丈夫かなと。実際、遅くまで働いた翌日早朝からヘルピングの演習、という日もありました。

大場竜佳さんのインタビュー写真

「聞けているつもり」が壊された瞬間

学びの中で、特に印象深かったことは。

やはりヘルピングの実技練習です。前職で新卒採用もやっていましたから、人の話を聞いてきたつもりでいました。もちろん面接とキャリアカウンセリングは違うのですが、それでも、人の話を最後まで聞ききるということが、いかにできていなかったか、そして「できている」と思い込んでいたか。それをGCDFの実技のプロセスで突きつけられました。

ロールプレイでは、つい解を出したくなったり、自分の知りたいことを急いで質問したりして、完全にドツボにはまるんです。しかも無意識にやっているので、なかなか気づけない。相手を本質的に理解したいと望んでやっていたはずのことが、むしろ真逆に働いて、相手のキャリアに対する意思や本当に欲していることへの理解から遠ざかっていた。それに気づいたのは、自分の中でパラダイムが大きく変わる瞬間でした。

同じ講座を受けていた同期には、修了後に「配偶者との関係が良くなった」と言う人が結構いたんですよ(笑)。ビジネス文脈とは違うコミュニケーションの技術なのですが、それが結果として、ビジネスの世界にきちんと成果として返ってくる。そういう技術を身につけたのだと思います。

理論の学びについてはいかがでしたか。

人事をやっていると、ネット上の情報で「こんな理論がある」と知ることはできます。ただ当時の私は、自分の仮説に合致する学術的な根拠を拾い食いしているような状態でした。理論には歴史があり、体系があり、コンテクストがある。それを体系的に学べたことは、非常に大きな成果になりました。

一度の不合格と、学び続ける覚悟

試験は順調に進んだのでしょうか。

実は、実技試験に一度落ちています。絶対にできたと思っていたのに、です。先生に言わせると「いや、それは落ちるよ」と。やってはいけないと教わっていたことを、本番でもやっていたんですね。まさか自分が落ちるとは思ってもいませんでした。もしかしたら、永遠に受からないのではないか。やってもやっても変わらない自分に向き合うのはつらかったですね。暗いトンネルでした。ただ、後から振り返ると、なぜ落ちたのかが本当によくわかるんです。

3か月の講座を終えて、どんな気づきがありましたか。

改めて思ったのは、この世界は本当に奥深いな、ということです。磨き続けないとダメだ、学び続けないとダメだということを、資格を取ってからのほうが、より一層強く感じました。修了後も継続学習の仕組みがあるので、学びが循環し続ける。そういう仕組みに乗れたのだと思います。

転職直後にGCDF養成講座を受講したことで、会社の理解を深める良い機会にもなったと伺いました。

そうなんです。右も左もわからず、業界も違うところから入ってきた私が、事業サイドから参加して来ている社員と机を並べて学ぶ。その過程で事業のことも学べましたし、お互いに「この会社で働く意義」や「この会社に見出している価値」が言語化されるプロセスがありました。転職したての私にとって、事業の理解、企業文化の理解、そこにいる人一人ひとりの理解の場として、副産物的にすごく効果がありました。

大場竜佳さんのインタビュー写真

20年の人事実務に、効き続けている

修了から約20年、学びはどう役立ってきましたか。

これは、インタビューだから宣伝しているわけではなく、本当にそうなのですが......。当初はキャリアコンサルタントという職に就く人のための学びだと思い込んでいました。ところが振り返ってみると、人事のほぼ全域を体系的に網羅するような知見が含まれているプログラムだったんです。20年近く前の学びなのに色あせず、むしろ現代的な課題に向き合えるだけの武器になっています。

私のキャリアの前半は、採用や人材開発のような表に出る仕事よりも、労務・労政や構造改革など、キャリアの壁や葛藤に直面する社員の方々に向き合う期間が長く続きました。そうした方々と話していると、「ここに至るまで、どんなことを大切にしてキャリアを選択してきたのだろうか。この人はなぜ、こういった状況に至っているのか」と考えさせられることが多いんです。GCDFで学んだ理論とカウンセリングの視点は、その「なぜ」を紐解く大きな手がかりになりました。

人事戦略を企画、構想する仕事でも効いています。人事は労働市場をマクロとミクロの両面で見立てる必要がありますが、私たちは人材サービスを営む会社ですから、転職者や求職者の方がこれからどう動くのかという見立ては、事業を考える上でも欠かせません。ここでもGCDFの学びは、とりわけ有益に機能しています。

障害者雇用の領域でも同じです。特別なニーズを持つ方々のキャリアをどう考えるか──それまでの私にはなかった視点を、この学びから獲得できたと思っています。

「人材サービス企業の人事」という、二重のお立場でもありますね。

そうなんです。二重の意味で人事なんです。社員を見ると同時に、その先のお客様を見る。究極的には、働くにまつわる社会課題をどれだけインパクトを持って解決できるかが私たちの業の担うところですから、一歩引いたところで市場や働き手の動きを客観的に見られるようになったことは、本当に良かったと思います。この10年ほど人事の世界でイシューになっていることの多くが、20年前のプログラムに最初から書かれていたんですよ。今回の取材を前に内容を見返して、先を行くプログラムだったんだなと、認識を新たにしました。

「ADVANCED HR SHOWCASE」──実験する人事であるために

グループ人事本部が掲げるポリシーについて教えてください。

「ADVANCED HR SHOWCASE」は2016年に掲げ、今年で10年になります。テンプスタッフや旧インテリジェンスなどが「パーソル」という一つのブランドの下に統合されていく方針が明確に示された年で、グループ横断の人事の取り組みを進め、グループであることを強みにして価値を出していこうという思いがありました。人材サービスを営む会社として、日本の人事部門の、いい意味でも悪い意味でも事例として学びにしてもらえるようなチャレンジをどんどんしていこう、と。

私自身、前職が金融機関だったこともあり、人事部門はリスクを大きく評価しがちで、失敗してはいけない、100パーセントの精度でやり切ることに価値が置かれがちだと感じていました。それはそれでもちろん大事なのですが、そのマインドセットが、新しいことへの挑戦や、間違ったらやめる軽やかさを削いでいるのではないかとも思っていたんです。失敗はつきもの、失敗してもいい。実験をして、検証して、いいものは生かし、悪いものは潔くやめる。そういうカルチャーの中で、挑戦と変革を人事部門としても体現したい。それが最初の思いでした。ある大学の先生に、旧インテリジェンスの人事は「実験人事だよね」と言っていただいたことも、きっかけの一つです。失敗も含めて世の中に伝えていくことで、日本の企業の人事部門がさらに進化・加速するのではないかと思っています。

具体的には、どんな「実験」が生まれていますか。

例えばキャリアオーナーシップの観点では、オープンポジション制度に加えて、グループ内で人材を引き抜き合うことができるというスカウト制度があります。普通のロジックなら「事業側への影響が」と言われるところですが、外のサービスで外部に人材が流出しているのなら、グループ内で優秀な人がフィールドを変えて活躍し続けられるほうがいいはずだ、という仮説で思い切ってやってみたんです。すると、社員にとっても事業にとっても、良い影響がありました。また、人事本部全体でも「AI×HR」の学びの場をつくったり、HRテクノロジーやデータ活用のスキル開発をしたり。学ばなければ、私たちが元々価値を出していた知識や経験は本当に陳腐化していくよ、と自身への戒めも込めて常に言っています。

GCDFの学びを社内で奨励し続けている位置づけは。

特定の事業のためというより、グループ全体のナレッジ強化、文化づくりという観点です。人の課題と組織の課題は有機的につながっていますから、人材サービスに従事する者として、いろいろなドアを開けて問題の本質に近づいていけるタレントを育てたい。当社のカルチャーを深く理解した講師の先生が長年にわたって教え続けてくださっていて、寺子屋のような一つの学びの文化ができていると思います。

大場竜佳さんのインタビュー写真
インタビュアーを務めたのは、CCA理事長・平野裕之。

AI時代のキャリアと、人生全体を充実させる生き方

今後の抱負をお聞かせください。

AIと一緒に働いていく時代の中で、キャリアオーナーシップや個人のキャリア選択は決定的に変わっていくと思います。自分の仕事がAIに取って代わられるのではないか、積み上げてきた知識や経験が無価値になるのではないか、という恐れは強い。でも一方で、働き手にとって大きなチャンスでもある。何十年も磨き込まないと獲得できなかった知識やスキルが、ほぼ無償で手に入るようなことが起きるわけです。AIと共に働く時代のキャリアをどう捉え、どう行動を変えていくことが働く喜びにつながるのか。それを社内でたくさん実験しながら、一つのモデルとして世の中にお見せしていけたら面白い。新しい時代のキャリア観をつくることを応援していきたいと思っています。

大場さんご自身の、これからの生き方・働き方についてはいかがですか。

今は現在の職責の中でどう価値を出すかに熱を注いでいますが、一方で、娘はまだ小学校前で、息子は中学生。子どもに向き合う時間もたくさんあります。同時に、父が母を介護する老老介護の状況もあって、私も時々手伝いに行きます。そういう不可避な事象があるからこそ、仕事のことだけ考えていればいいという状態から、逆の意味で解放されているのかなと前向きに捉えている自分もいます。まさにライフキャリア・レインボー(※)のように、たくさんの色合いが両立している。大変ながらもなんとかマネージできている。そういう生き方を一つのサンプルとして知ってもらえたら、ありがたいですね。

介護のことは外部の取材でも率直に話したことがあるのですが、その後、身近な人たちが「実は私にも要介護の親がいて」と教えてくれたんです。私が語って開示することで、他の方も話しやすくなったり、当たり前のこととして自分のキャリアを人に伝えられるようになる。自分自身が発信や開示をしていくことには意味があるのだと、今は思っています。

(※)ライフキャリア・レインボー......ドナルド・E・スーパーが提唱した概念。キャリアを単なる「職業」としてではなく、子ども・学生・職業人・家庭人・親といった、人生全体における「さまざまな役割の組み合わせ」として捉える枠組み。ワークライフバランスやキャリア自律を考える土台となる。

大場竜佳さんのインタビュー写真

「自分の刷新、再発見」──これから学ぶ方へ

大場さんにとって、GCDFの学びを一言で表すと。

一言でいうと難しいのですが......。自分というものの、刷新と再発見ですね。無意識にやっていたことの意味や理由がわかる。そして、それを意識の下でコントロールし、意味を与えていけるようになる。自分が正しいと思ってやっていたこと、無意識の仮説を持ってやっていたことが、ことごとく裏切られるんです。氷山の一角を見て全体をわかったつもりでいたけれど、氷山は無限に大きかった。それを、気持ちよく突きつけられる。何をやっていたのかがわかり、わかった上で次に何をすればいいのか、羅針盤を示してもらえたのだと思います。

最後に、これから学ぼうと考えている方へメッセージをお願いします。

キャリアコンサルタントになることもひとつの目的だとは思いますが、その言葉だけで閉じる学びではありません。人事プロフェッショナルの方には、キャリアコンサルティングというスコープを超えて、人事としての立体的なものの見え方ができるようになる貴重な学びの場としてお勧めしたい。人材サービスに従事する方にとっても、一人ひとりがどんなニーズや恐れ、欲求に基づいてキャリアを選択していくのかが見えてくることで、「市場を見る」「お客様に思いを巡らす」という面で、非常に多面的な学びが得られると思います。そして、キャリアとは結局、生き方そのものに幅広く向き合っていくことです。家族との関係が良くなったという話もそうですが、人生を豊かにし、人というものの本質がよりわかるようになる、そのきっかけにもなる。実践と知識のバランスの良さ、そして実技の過程で、自分が無意識にやっていた発話や行動に改めて光を当ててもらえること。そうした質の高いプログラムが提供されているのだと思います。

大場竜佳さんのインタビュー写真

プロフィール

大場竜佳さんのインタビュー写真

大場 竜佳(おおば・たつよし) パーソルホールディングス株式会社 執行役員 CHRO 兼 グループ人事本部 本部長

米国CCE, Inc.認定 GCDF-Japanキャリアカウンセラー

新卒で生命保険会社に入社し、人事部門で採用・給与・労務・人材開発など幅広い実務を経験。2007年、旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)に入社し、2008年にGCDF-Japanキャリアカウンセラー資格を取得。以後、人事企画をはじめグループ横断の人事施策を推進し、現在はパーソルグループ全体の人事を統括する。

略歴

2003年生命保険会社に入社、人事部門に配属
2007年旧インテリジェンス(現パーソルキャリア)入社
2008年GCDF-Japanキャリアカウンセラー資格取得
2016年パーソルホールディングス株式会社 グループ人事本部 人事企画部 部長
2025年同社 執行役員 CHRO 兼 グループ人事本部 本部長(現任)

※役職は取材時点

撮影/執筆:三宅弘晃

※このインタビューは2026年7月2日に実施されました。

← 修了生インタビュー一覧へ