インタビュー
修了生インタビュー
樫村周磨
ゼスト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人グローバル人事塾代表理事 / 一般社団法人ステップフォワードジャパン 発起人:理事/一般社団法人デジタル・イノベーション/iU情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
自己理解の一歩先、自己変革を起こす学び
「つなぎ屋」が歩んだ、GCDFと場づくりの道

企業の人事コンサルティングや採用支援・人材研修・顧問紹介等を手がけるゼスト株式会社の代表であり、一般社団法人グローバル人事塾の代表理事一般社団法人ステップフォワードジャパンの発起人:理事も務める樫村周磨さん。求人広告の営業から支店長、独立・起業、そして複数の団体・コミュニティ運営へと、「人と人、組織と組織をつなぐ」実践を広げ続けてきました。その歩みの転機には、キャリアカウンセリング協会(以下、CCA)のGCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム(以下、GCDF養成講座)での学びがありました。本記事では、樫村さんの歩みと実践を通して、GCDFの学びが社会にどのように実装されているかについて伺いました。
「人と話すのが好き」――気づきから始まったキャリア
社会人としての最初の一歩は、IT企業のプログラマーだったそうですね。2ヶ月で退職されたと伺いました。
はい。実際に入ってみたら、まるで研究室のような場所で、ほぼ一日中、会話がない働き方だったんです。集中できる環境ではあったんですが、ずっと一人でパソコンの画面を見て一日を過ごす。それで、自分はやっぱり人と話すのが好きなんだなと気づいたんです。上司に相談して退職を伝えました。「石の上にも三年」という感じではなかったですね。
その後は広告の世界へ進まれますね。
横浜にある 広告代理店に転職して、1年ほど、一般広告と求人広告の両面で法人営業をしました。もともと広告、特に雑誌の編集に興味があったんです。応募したら内定が出て、「いつから来られますか」と聞かれ、翌週には入っていました。決断は早かったですね。
そこから、求人の世界を一歩ずつ歩まれていきます。
次は都内の広告代理店に移って、3年ほど在籍しました。ほぼ毎日、飛び込み営業のような日々で、週ごとの目標を追いかけながら、新規のお客様をずっと回る。その後、転職し3年間、営業に加えて人事で採用も担当して、少しずつ領域を広げていきました。
30代前半で支店長に――走り続けた会社員時代
そして1998年、28歳で大手出版社られます。今度は代理店側ではなく、直販側ですね。
そうですね。横浜・関内の事務所で、ここでは営業所長として採用兼務で面接も数多く担当していました。その経験を買われたのか、やがて横浜市内各拠点の営業所長、務めることになります。長
所長時代は、どんな働き方だったのでしょうか。
所長として求人広告の法人営業を見ながら、採用のミッションも同時に担っていました。土曜日も出勤して面接業務をやっていましたね部下は10人から20人ほどで、ほぼ一週間フルで動いているような感じでした。そこから2008年春頃まで務めて、退職しました。

「人生の正午」に立ち止まる――GCDF受講の決断
独立とGCDF受講は、ちょうどその頃ですね。なぜ、自己投資として学ぼうと思われたのでしょうか。
自分が成長する機会を、自ら作りたかった。会社にもキャリアデザインの仕組みはありましたが、ちょうど40歳手前、「人生の正午」と言われる時期で。一回立ち止まって、このまま5年、10年過ごすのか、今のタイミングで退職するのか、結構悩んでいました。10年近くいて、いろんな経験をさせてもらった一方で、一定の区切りをつけて次のステージへ行きたい。ただ、それが何かわからなかった。モヤモヤしていた時期で、しかも社内に相談する相手もいなかった。当時は社外のネットワークもほぼありませんでしたから。
受講のきっかけは何だったのでしょう。
同じフロアで働いていた、人材紹介事業部の知人がGCDFのホルダーで、「もし悩みがあるなら、一回説明会に行って聞いてきたらどうですか?」と言ってくれたんです。説明会では、修了された方が資格取得のメリットやご自身の悩みを語るビデオが流れて。より実践的な学びを深められるという話だったので、「これだ」と、その場で決めました。
受講中に、講師の先生にキャリアの相談もされたそうですね。
はい。先生に相談したら、「あなたはどうしたいの」「どう生きたいんですか」という問いをいただいて。それまで、会社の中でそういう問いを真剣にされたことがなかったので、立ち止まって考える機会になりました。GCDFを学んでいるときは学ぶことに精一杯なんですが、先生との対話を通じてこれからどう生きていこうかと深く考えるようになった。人生の転機に背中を押してくれた存在だったと思っています。
分厚いテキストと、傾聴の難しさ
受講前に期待していたことは何かありましたか。
期待というよりも、真っさらな気持ちで受けていました。ただ、すごく覚えているのが、初日にかなり分厚いテキストが配られたときに、「本当にこれを学ぶんだな」と。もう少し気楽な気持ちで臨むつもりだったんですが、初日で大きなインパクトがあって、「これは真剣に学ばなきゃいけない」と気が引き締まりました。長年、人材系に携わってきても、本当に初めて知る理論があって、逆に「どんなことを学べるんだろう」という楽しみも膨らみましたね。
実技講習(ヘルピング)では傾聴の練習もあります。普段のビジネスコミュニケーションとの違いは感じましたか。
「傾聴」はすごく難しかった。つい、アドバイスをしたり、言葉を挟んでしまうときがあって。こちらから誘導したり、説得してはいけないんだな、ということを、まずそこで学びました。営業も採用も、ある意味マネジメントも、誘導のようなところがありますから。聴くことの重要さを学んだのが、一番印象に残っているかもしれません。
グループワークの記憶はいかがですか。
1テーブル4人ぐらいの島形式で、いろいろな業界や職種の方が来られていて、毎回違う人と一緒になり、対話を通して自己理解を深め、同時に他者の様々な価値観も理解し受容する体験をしました。多種多様な方々との交流がその場で生まれて、途中からは懇親会もありました。そこでより学びが深まったのは、今思うと強く印象に残っています。
当時は丸1日かけて学ぶこと自体が本当に久しぶりでした。家に帰ってからは一人で思い出したりして。キャリアというものをそれまで意識したことがなかったので、回数を重ねるごとに、内省したり、これから先の未来を考えるきっかけにつながっていきました。

独立――「個人に向き合う」軸が定まった
修了する頃には、独立の意思は固まっていたのでしょうか。
いえ、その気持ちはまだそんなに強くなかったかもしれません。まずフリーランスからスタートしました。その頃から人材業界以外の方々と出会う機会も増え始め、やり取りを通じてだんだんと自分のキャリアの方向性が見えてきました。つまり、個人のキャリア支援に向き合いたいという気持ちが、自分の中でより鮮明になっていったんです。その後、会社を興すことになって、最初は人材紹介会社を立ち上げました。2009年1月です。
BtoBの求人広告から、個人に向き合う仕事へ。学びは実務にどう効きましたか。
サラリーマンの頃は、ずっと組織や企業に向き合う仕事でした。それが、実際に個人のキャリア支援をやってみると、それが自分の中でしっくりきたんです。
キャリアに悩んでいる方の話を聞いていくと、その方のキャリアの輪郭がだんだんはっきりして、ご本人に未来が見えてくる。その過程で、GCDFで学んだことを活かせる瞬間がいくつもありました。例えばクランボルツの「計画された偶発性」(偶然の出来事をキャリアの機会に変えていく、という理論)もその一つです。もし個人のキャリア支援に向き合っていなかったらどうなっていただろうと、逆に思うくらいですね、GCDFをあのとき学んでよかったなと思うようになりました。
その後、事業は再び企業向けにも広がっていきます。
人々が転職を決断して移っていく光景を何度も目にしてきましたが、入社して早期に辞めてしまう事例も出てきて、「果たしてそれで良かったのかな」と疑問を持つことも増えてきました。むしろ、採用された後にその人のキャリアに伴走する、「定着支援」も非常に大事なんじゃないかと。そこから早期離職や定着支援という形で、人材育成・顧問派遣等、自社の新しいサービスとして始めました。今は、個人に対してはオンラインで一対一のカウンセリングやコーチングを行ったり企業のCHROや採用部門のアドバイザーとしての契約も増え、事業の柱としては対企業に採用・研修事業で軸足を置いています。
グローバル人事塾――学びの場を、自分でつくる
2013年には一般社団法人グローバル人事塾を立ち上げられます。
2010年前後から、HR業界の交流会を仲間と立ち上げていたんです。今のグローバル人事塾の前身にあたる「パッション」という団体です。きっかけは、ある社長さんから「経営者同士がつながる場を作ってほしい」「HR業界のつながりを作ってもらえますか」と言われたこと。そういう場を紹介しようと探したんですが、当時はあまりなかったんです。それなら自分で、と、HR業界のグループを立ち上げて、仲間と一緒に企画し、講師の方も呼んで、セミナーと懇親会の企画を定期的にやっていきました。
単なる交流会ではなく、勉強会にこだわられたのですね。
飲んで交流するのは楽しいんですが、楽しいだけで終わってしまうと、その先につながって実践で活かせる知識が得られない。そこで立ち上げたのが、グローバル人事塾。GCDFの勉強会で経験したことを活かせる場をつくりたい、そしてGCDFの仲間が継続学習できる場をつくりたいという思いで、2013年にグローバル人事塾を創業しました。
運営のご苦労も多かったのではないでしょうか。
最初の2、3年は、会場費・雑費などでほぼ毎回赤字でした。それでも、継続することで次の展開が見えてくるかなと思いながらやっていました。参加者集客、会場探し、バナー制作、講師へのオファー・打ち合わせ。本業と同時進行で進めるのは、なかなか大変で、同時期に同じようなことをやっていた団体は、ほとんど2、3年で辞めてしまいましたね。
続けるうえで意識していたのは、あまり感情移入しないこと。一喜一憂しない、粛々と進める。ハプニングがあってもそこに一喜一憂しないことが、鍵かなと思います。
続けてきたからこそ得られたものは。
やっぱり、横のつながりが増えてくるんですよね。経営者・人事の方同士、HR業界で活躍する方、講師業の方。そこでご縁ができて、それがまた仕事へつながる、循環するシステムのようなものが出来上がってきた。お互いを知って、信頼関係を作って、一緒に学び合う時間を共有する。心理的安全性のある場になっていったと思います。

自己変革を支援する――ステップフォワードジャパン
一般社団法人ステップフォワードジャパンの理事も務められています。グローバル人事塾との違いは何でしょうか。
グローバル人事塾は、組織の中でどう企業の成長につなげるかを経営者・人事責任者が学びメソッドやスキルにフォーカスした場です。ステップフォワードジャパンは、ゲストの方の半生に沿って成功体験や失敗体験を語っていただき、人生そのものを学んでいく場。どちらも会社の中にとどまらず、自分の世界観や視野を広げていく自己革新の場として成り立っていると思います。
どんな課題感があったのですか。
グローバル人事塾でも、人事、採用、キャリア、働き方と、いろんなテーマでやってきましたが、個人の変革まではなかなかつながっていかない部分があって。それをステップフォワードで実現できないか、という思いがありました。今考えているのは、チャレンジしきれていない若い世代や新しい事業をたちあげたい経営者に向けた、より踏み込んだプログラムです。1回2時間の講義で着火することはできても、「では明日から具体的にどうしますか」というところのサポートが必要なんだと分かってきましたから。

「つなぎ屋」の次の構想
今後の抱負をお聞かせください。
グローバル人事塾で初めての部活としてランニング部(RANVE)を2019年に2名の仲間と立ち上げて、別のランニングチーム(エルラン)も2025年に立ち上げ2年目に入りまし。ランニングを通して、自分自身の人生がかなり鮮やかになっていったのが分かるんです。日々生きていて楽しい、という実感がより持てるようになった。このコミュニティはたまたま大半がHR業界の方々なんですが、この方々と次のステップとして、ランナーとシェアオフィスを掛け合わせたようなリアルの拠点を作りたいと構想しています。海外・地方へ走りに行くとき、現地で走っている人たちと出会うきっかけがほとんどない。オンラインでつながり、リアルの場を持つことで、越境してつながるような場をもっと作りたいなと思っています。
「つなぎ屋」という言葉がお好きだそうですね。
好きなんですよね。好きでないと、おそらくやっていないと思います。グローバル人事塾にしても、ランニングチームにしても、横浜の経営者や人事が集う場も、自分自身が「こういう場所があったらいいな」というものを、今まで立ち上げてきた気がします。「こういうのがあったらいいな」という人たちの思いをつなげることで、今までにないものができる。それを自分で実証実験してきたところもあるかもしれません。誰かに言われてやっていたら、おそらく途中で頓挫していたと思います。
キャリア支援の担い手に向けた場づくりも考えていらっしゃると伺いました。
キャリアコンサルタントやキャリアカウンセラーが、より日常的につながれる場があったらいいなとすごく感じていますし、その人たちが活躍できる場を作っていくことも必要だと思っています。昨年、副業をテーマにした本(※)を大村信夫さんと出版した際に約200人にインタビューをしたのですが、キャリア支援職の方々が一様におっしゃっていたのが、「稼ぐ手段を持ちたい」「自分のキャリアの領域をもっと広げたい」ということでした。そういう機会を提供できる場があるといいと感じます。燃えるような感じではないかもしれませんが、静かに燃えていく、という感じで。
(※) 『副業の超基本』(2025) 大村信夫・樫村周磨 監修

GCDFとは何だったのか――これから学ぶ方へ
改めて、樫村さんのキャリアにおいて、GCDFの学びはどんな位置づけでしたか。
キャリアを体系的に、深く学べるところ。そして、実際に事業をしていく上で生きる、まさに生きた学びをそこで得られる場だったと思います。あとは、やはりそこで出会う人。経営者や人事責任者として活躍している方も多くて、横のつながりができることで、自分の人生の転機に出会える。学びと出会い、その両方が自分にとって大きかったですね。
どんな方にGCDFを薦めますか。
経営者や人事、マネジメント業務を深めていきたい方は、ほぼ対象になると思います。自分自身がそうでしたが、「将来、自分で事業を興したい」「新しいサービスを作りたい」「より個人のキャリアに向き合いたい」、という人には、最適な学びの場じゃないかなと思います。やはり実践的であることが一番大きな特徴です。実際に自分のキャリアの転機に向き合う場面が、授業を通していくつもありました。
ご自身では、何が一番変わったと感じますか。
明らかに、GCDFを学んで行動変容が起きました。キャリア理論を学んだことと、そこで出会った方々と、自己開示しながらいろんなキャリアに向き合えたこと。その両方だと思います。そこで学んでいなければ、おそらくグローバル人事塾も、数々のコミュニティも生まれていなかった。自分の人生に非常に大きなインパクトを残した聖地だったと思います。
資格を取られてから長い年月が経ちますが、GCDFのブランドを感じる瞬間はありますか。
ありますね。名刺交換をしたときに、名刺に「GCDF」と入っている方と出会う機会が増えてきて、お互いにそこが共通言語になる。「あれは大変だったよね」「あれを学んでよかったよね」という会話が自然に生まれて、一気に距離が近づく。その後の商談がスムーズに進むということは、正直あります。日本のキャリアカウンセリング業界の草分け的な存在ですし、その伝統的な資格と出会えたのは良かったなと思います。
最後に、これから学ぶ方に向けて一言お願いします。
ぜひ自己変革のきっかけにしてください、というところですね。自己「理解」の一歩先を行く、自己「変革」。自分自身にイノベーションを起こすこと。学びたいという人には、何かしら動機があるはずなんです。今の自分を変えていきたい、自分のキャリアを見つめ直したい、新しいチャレンジをしたいので学び直したい。そういう方に、知識や技能はもちろんマインドや人とのつながりも含めて、自己変革を後押しする要素が詰まった場だと思います。

プロフィール

樫村 周磨(かしむら しゅうま)さん
ゼスト株式会社 代表取締役 / 一般社団法人グローバル人事塾代表理事 / 一般社団法人ステップフォワードジャパン 発起人:理事/一般社団法人デジタル・イノベーション/iU情報経営イノベーション専門職大学 客員教授
保有資格:米国CCE, Inc.認定 GCDF-Japanキャリアカウンセラー
企業の人事コンサルティング、採用支援・採用ブランディングを手がけるほか、複数のコミュニティを主宰し、人と人、組織と組織をつなぐ「場づくり」を続けている。
ゼスト株式会社 代表。広告・求人メディアの営業を経て、インテリジェンスで各拠点の所長として営業と採用を兼務。2008年に独立し、ゼスト株式会社を創業。人事コンサルティング、採用支援・人材研修・顧問紹介を手がけるとともに、「グローバル人事塾」「ステップフォワードジャパン」「デジタル・イノベーション」、横浜HR会、ランニングチーム「RANVE(乱舞)」「エルラン」など、複数の団体・コミュニティのファウンダー。人と人、組織と組織をつなぐ「つなぎ屋」として、学びと挑戦の場をつくり続けている。共同監修に『副業の超基本』(大村信夫氏と共著)。
略歴
※役職は取材時点
撮影/執筆:三宅弘晃
※このインタビューは2026年 6月24日に実施されました。
