キャリアコンサルタント養成講習、GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム。

インタビュー

講師インタビュー

網野千文あみのちふみ

キャリアカウンセリング協会特別講師

資格取得はスタート地点

自分に向き合う場をつくる、GCDFの学び

網野千文先生のインタビュー写真

キャリアカウンセリング協会(以下、CCA)でGCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラム(以下、GCDF養成講座)の講師を長年務め、特別講師として講師の育成にも携わってきた網野千文先生。民間企業で事業推進、人事、マネジメント業務に携わったのち、ジョブカフェの若年者支援から大学のキャリアセンター立ち上げまで、さまざまな現場で人と向き合ってきました。その経験から網野先生が繰り返すのは、「資格取得はスタート地点」という一言です。本記事では、網野先生の歩みと支援観・教育観を通して、受講生が実際に変わっていく場としてのGCDFの学びを紐解きます。

「ものづくりって面白い」と思える人を増やす。「採用」から始まったキャリア

網野先生は、もともとリクルートでキャリアの領域に関わってこられました。そもそも、どのようにして「キャリア」というテーマに出会われたのでしょうか。

自分のキャリアを考えたのが、最初のきっかけだったと思います。それまで私はリクルートで、編集や制作、人事・採用を担当していました。当時のリクルートは営業主体の会社だったので、制作や編集といった専門職を意識して採用することが、ほとんどありませんでした。それを、人事を担当するようになったときに変えたいと思いました。本当にものづくりに向いている人を採用して、配属し、育てていく。「ものづくりって面白いな」と思える人を増やしたい。振り返ってみると、そう考えたことが、私がキャリア支援に取りかかった最初だったのだと思います。

そこから、ご自身のキャリアを考えるなかでGCDFに出会われた。

今後の自分のキャリアを考えたとき、体力的にもそろそろ次のステップかな、と思ったんです。そこで出会ったのがGCDFでした。ちょうどリクルート内で養成講座を立ち上げる動きがあり、社内報で見て「面白そうだから勉強してみよう」と思ったのが入り口です。

当時は、キャリアカウンセラーという仕事自体が、まだ知られていなかった時代ですね。

そうなんです。もう二十年ほど前ですから、「キャリアカウンセラー」と言っても、「何ですか、それ?」という時代でした。ですから、資格を取って会社を辞めても、働く場所が本当にあるのか、学んだことが活きるのか、という不安はありました。

それで、人に関する仕事をしているOBが何人かいたので、取材に行ったんです。アポイントを取って話を聞くのは、自分の得意技でしたから。「これからこういう仕事は世の中的にどうですかね」と。そうしたら、半分くらいは「なかなか難しいかもね」という答えでした。

CCA創設の頃に、キャリア支援講師になる

その後、CCAは法人として歩み始めます。

当時、初代理事長の花田さんがこの協会を特定非営利活動法人にしていこうとされていた頃に、話を聞きたくて取材に行ったんです。その時が花田さんが私に講師をお願いしようと思われたのかな。

「それ、やりたいの?」と聞かれて、私は「ニーズがあれば、勉強したことを活かせるかもしれない」と。仕事になるかどうかは、そんなに気にしていませんでした。むしろ、ニーズそのものを作るところからやらなくちゃいけない、という話をしていたんです。

そこで、講師が足りないという話につながっていく。

そうなんです。「実は講師が足りないんだ」、と。当時は二人しかいませんでした。広げていくには講師が必要だ、ということで、「やらないか」と。正直、キャリアコンサルティングもやっていないのに講師? という感じでしたよ。でも、ニーズがまだないからこそ、育てていかなくちゃいけない。そういう思いがあったので、「お手伝いできるなら」とお引き受けしたんです。

網野千文先生のインタビュー写真

ジョブカフェで出会った、「これまでで会ったことのない人たち」

講師として歩み始めると同時に、カウンセリングの現場経験も積まれたのですね。

ちょうどその頃、ジョブカフェで初めてカウンセリングを始めたんです。当時リクルートのOBから船橋のジョブカフェで、「カウンセラーをやらないか」と声をかけてもらいました。でも、対象は15歳から34歳までの若年者じゃないですか。どちらかというと、それまで私が会ったことのない人たちでした。

会社員時代に向き合っていた相手とは、まったく違う層だったのですね。

ええ。15、6歳の子が何を考えているのか、私にはわからなかったんです。中学や高校を中退していたり、夜間に通っていたり。なかには引きこもっていて、親に連れられてくる子もいました。私たちの世代は、とにかく働くことが重要で、一生懸命就活をしていた。だから「働かない」という現実が、よく理解できなかった。

でも、そこで気づいたんです。キャリアカウンセラーというのは、会社で頑張っている人を支援するだけじゃないんだ、と。これは、勉強だけではわからなかったことでした。ジョブカフェに誘ってもらって本当によかったと思うのは、キャリアを考える前に、まず生活であり、自分自身を見つめることが、すごく重要なんだと気づけたことです。自己理解、というやつですね。

ですから、勉強に来た受講生にも、「あなたの見ている現実は、本当に微々たるものですよ。世の中にはもっといろいろな人がいる」と、結構言うんです。すると終わる頃には、「実は私の知り合いに引きこもりの人がいて......その気持ちはわからなかったけれど、勉強したら少しわかる気がしてきました」と言ってもらえる。よかったなと思いますね。

その気づきが、先生の支援観につながっていく。

そうですね、最近の受講生には、企業から来る、ある意味「できる」人たちが多い。そういう人たちとばかり接してきた人間は、世の中にいる多種多様な人の存在を、私も含めて知らない事って多いですよね。

東大に「横串」を通す。溢れていく学生のために

その後、大学のキャリア支援にも関わっていかれます。東京大学でのキャリアセンター立ち上げですね。

東京大学でキャリアセンターを立ち上げるという話があって、声をかけていただいたんです。そのとき思ったのは、大学って、入学してくる学生のことばかり考えるけど、卒業して社会に送り出す時のことはあまり考えていない、と。「東大でそんなものが必要なの?」と言われたりもしましたが、「東大だからこそ必要なんだ」と、職員さんに語った事を覚えています。

当時は、法学部や工学部といった「縦軸」の支援が中心でした。優秀な子はその学部の就職支援で見てもらえますが、そこから溢れる学生がたくさんいる。その学生たちを支える、横串の機能をつくろう、と。最初は学生が来ても座る場所すらなくて、整備はそこからでした。カウンセラーを雇い、カウンセリングルームを作り、半年から一年かけて仕組みを整えていったんです。

1、2年生への支援にも踏み込まれたと伺いました。

東大も、最初の1、2年は学部が決まっていないんです。第一志望が法学部でも、2年間でいい成績を取らないと進めない。だから、本当はその時期の学生こそ、すごく不安なんです。あるゼミの先生から、「希望と違う学部になっても、将来に大きな影響はないんだよ、という視点で授業をしたい」とオファーをいただいて、キャリア講座を組みました。

伝えたかったのは、思うようにいかないことが悪いんじゃない、ということです。視野が広がれば、もっとやりたいことが生まれてくる。行きたいところに行くのもいいし、行ってからまた道を考えればいい。

最初は小さな部屋だったのに、来てみたら学生が並んでいて。急遽、大きな階段教室を取り直してもらったんです。二回目から減るだろうと思っていたら、全然減らない。授業の後に「今日学んだこと」を書いてもらうと、「こんなこと言われたことがなかった」「法学部だからと決めつけちゃいけないんだな、と思った」と。先生方と一緒に喜びましたね。

網野千文先生のインタビュー写真

資格取得はスタート地点

そうした実践の積み重ねが、講師としての先生をかたちづくっている。

そうですね。この資格を取って、勉強したことが何に活きるんだろうと考え続けてきました。まったく経験のない対象に出会うことで自分の人生が変わったり、学んだことが大学のキャリアセンターづくりに活きたり。いろいろな面でつながっているんです。

ただ、最近は受講生を見ていても「この方法を勉強すればいい」「資格を取ればいい」という傾向が強くなってきている気がします。だから私は、授業の中でしつこく言うんです。「あなたが学んだことは、その資格を取った後からスタートするんですよ」と。「ここをイメージして、今、何を学ぶのかを考えてください。そうしないと、取って終わりになりますよ」と。

多くの資格とは、性質が違うということですね。

多くの資格は、「この仕事をするために必要な条件」ですよね。条件を満たせば、その仕事ができる。でも、キャリアコンサルタントは少し違う。確かに厚生労働省が定める能力という条件はあって、受かれば第一段階はクリアできた、ということになる。ただ、そのあと、どう活かすかを意識して身につけていないと、ただ取っただけの資格になってしまうんです。

なぜなら、扱う相手が人だからです。時代が変われば、人の背景も変わる。同じ家で育っても、一人ひとりパーソナリティは違う。しかも、その人は成長する中で考え方も変わっていく。つまり、決められたことで処理できる「対象物」ではないんです。そこが、普通の資格とは意味が違うと、私は理解しています。

それを実感として持っているかどうかが、大きいのですね。

そうなんです。実は、会社員時代にマネージャーとして行っていた評価面談の苦い経験が、ここに繋がっています。

当時、部下から「なぜ私はB評価なのですか」と聞かれた際、私は「BはBなのだから、次はAを取れるように頑張ろう」と、強引に次の話へ進めていました。しかし今振り返ると、あれは私の側から一方的に押し付けるだけの面談だったのです。

その後、カウンセリングを学び、「あの時、もっと部下の言い分を聴くべきだった」と猛省しました。まさに自分自身へのカウンセリングです。その後、その部下と面談した際に「あの時、実はこういう思いがあったんじゃない?」と聞いてみたところ、「なぜ分かったのですか!」と驚かれました。学んだスキルが、そのまま答え合わせのように、当時の自分に返ってきた感覚でした。

自分に向き合う場を、どうつくるか

先生が、授業やカウンセリングで最も大切にされていることは何でしょうか。

カウンセリングというのは、その人自身が、どれだけ自分のことに向き合えるか。そういう場にしなくちゃいけないと思っているんです。

たとえば、「自分は仕事を優先しているから、家族をおざなりにしている」と思い悩む人がいます。しかし、そこで思考を止めないことが大切です。本人の本心が「家族も大切で、時間を取りたかった。でも取れなかった」というものだとしても、それはあくまで過去の話。大切なのは「では、これからの限られた時間をどう配分していくか」という未来への問いです。 その時にその人らしさが出てくるんです。

「こうあるべき」という枠組みではなく、本人の選択として考えてもらう。

そうです。「自分はこういうポジションだから、メンバーが帰るまで帰れない」と言う人に、「早く帰ったほうがいいですよ。なんで帰らないんですか」と言うと、「え?」となる。その「当たり前」は、特に日本の風土として、会社ありき、というところがある。その人が優先している理由は、自分の中にあるのか、外的な環境にあるのか。それを本人がわからないと、前に進めないんです。

つまり「自己理解」いうのは、真に自分事として分かったのか、他人事として分かったつもりになっているのか。それをリアルにやりとりすることが、私は一番重要だと思って授業をしているんです。

答えや選択肢なら、いまはすぐに手に入る時代になりました。それでもカウンセラーが向き合うのは、どこなのでしょうか。

答えは、自分で出さなくちゃいけないんです。選択肢を並べることはできても、カウンセリングというのは、その根拠を聞き出すことなんですよ。「なぜ、そう思うの?」と。それは、その人がこれまで経験して学んできたことの中から出てきているはずで、一人ひとり全部違う。

アルバート・エリスが提唱した「ABC理論(出来事そのものではなく、それをどう受け止めるかという『認知・捉え方』によって、感情や結果が変わるという理論)」は、非常に素晴らしい視点を持っています。

一般的には「原因(出来事)があって、結果がある」と考えがちです。しかし実際には、その間に「人間の捉え方」が介在して結果が引き起こされています。「あの出来事がいけない、上司が悪い」と周囲のせいにしがちですが、その結果を引き寄せているのは、他ならぬ自分自身の受け止め方や行動の選択でもあるのです。

「あなた自身がその選択をしたからこそ、この結果に結びついているんだよね」という事実に、本人が自ら気づけるように話を聴いていく。それこそが、キャリア支援において最も重要なポイントなのです。

網野千文先生のインタビュー写真

グループワークこそ、GCDF最大の強み

講師というお立場から、GCDFというプログラムの特徴をどう見ていらっしゃいますか。

最近はオンラインの授業も増えていますが、テキストを平面に解説するのではなく、立体にして、臨場感を持って伝えるのが講師の役割で、私自身は、資料なしで、対話をしたいんですよね。

その上で、一方的にこちらが喋るのではなく、グループワークがある。これが、私はGCDFの一番大きな良い点だと思います。年齢に関係なく同じグループになって、今まで接したことのない、自分とは違う経験を持った人たちと話をする。すると、新たな発見があって、自分の視野が広がる。狭い範囲から一歩出て、さまざまなフィールドの人たちと意見を交わし、新たな価値観を身につけられる。そこが、GCDFのプログラムの一番効果的なところだと思います。

入講時と卒業時で、受講生が変わっていく。そこに喜びがあるのですね。

私は、それを見たくてやっているようなものですね。形式的な資格は、極端に言えば本を読めばある程度の完成形までいく。でも、キャリアコンサルタントは違う。人が人の相談を受けて、本人がわかって、自分なりに考えて、自分のこととして動けるようになる。これは、ほかにない仕事だと思うんです。

誰でも、学び始めたときは、自分の世界が全てなんです。それが、まったく違う世界の人と関わることで、少しずつ蓋が開いていく。他の世界の人もわかるようになってくる。それが、一番のテーマだろうと思います。

「教えればいい」では足りない――講師に求められるもの

特別講師として、講師の質を高める勉強会も担っていらっしゃいます。GCDFの講師に求められるものは何でしょうか。

何よりも人間性だろうと思います。「教えれば、伝えればいい」と思っている人は、向いていないかもしれません。コンテンツは、極端に言えば、テキストを読んでキーワードを覚えれば伝えられる。でも、「1日の講義手順があるんだから、そのままやればいいんでしょう」という人は、向いていないんです。

いわゆる、インストラクター型ということですね。

そうです。さらに、「これはこうしたほうがいい」と答えを伝えてしまう人もいる。でも、相手に考えてもらうようにしたほうがいい、という視点を持ったほうがいいんです。カウンセリングはやはり実技なので、自分の経験が相当ないと難しい。続いて学ぶ意欲ですね。今まで身につけたことは、古くなっていく。だから、常に学ぶ。新しく経験した人の話には、新鮮な部分があって、こちらの学びにもなります。本を読んで「こういうことです」と言われても、私はあまり信じないんですよ。「それ、受け売りでしょう」と。活かして初めて、自分が吸収したことが活きるはずなんです。

最後に、受講を検討されている方へ、一言いただけますか。

今、タイパ、コスパと言われますよね。でも、この勉強は、時間が短いとか、効率化されているとか、簡素であればいい、というものではないと思っています。

きちんと時間をかけて、かけたなりに、自分に向き合う。そこから新たな知識を得て、それを使う。覚えたらすぐにできる、というものではない。だからこそ、きちんと自分に投資するという視点を、ぜひ持ってほしいなと思います。

3ヶ月間、12日かけてGCDFで学べば、人は変われると思います。

網野千文先生のインタビュー写真

プロフィール

網野千文(あみのちふみ) キャリアカウンセリング協会特別講師

リクルートで編集・制作、人事・採用に携わり、「ものづくり」に向いた人材の採用・育成に取り組む。退職を機にGCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムを受講し、CCAの講師・トレーナーとして養成に携わる。ジョブカフェでの若年者支援、東京大学キャリアセンターの立ち上げなど、企業・行政・大学の現場でキャリア支援を実践。現在はCCA特別講師として、GCDF講師の育成や勉強会、スーパービジョンにも携わっている。

略歴

1976年株式会社リクルートに在籍。編集・制作部門を経て、人事・採用を担当。
2004年GCDF-Japanキャリアカウンセラートレーニングプログラムを受講。退職後、CCAの講師・トレーナーとして養成に携わる。
2005年ジョブカフェ(船橋)でのキャリアカウンセリング、東京大学キャリアセンターの立ち上げなどに従事。
現在キャリアカウンセリング協会特別講師。GCDF講師の育成、一・二級技能検定試験の試験官、スーパービジョンに携わる。

インタビュアー / 特定非営利活動法人キャリアカウンセリング協会 / 理事長 平野裕之

撮影・執筆 / 特定非営利活動法人キャリアカウンセリング協会 / 事業企画 三宅弘晃

※インタビュー実施:2026年5月28日

←「経験豊富な講師陣」へ戻る